3月24日
映画や本から自分の感じたことを書き残していこうと思い立った。 無意識のうちに毎日が流れていく。何も考えなくても明日はやってくる。何のために生きているのか分からなくなる。俺はいつも何をしているんだろう。今の自分に満足していないことは確かだ。 でも、創作物は俺に夢を思い出させてくれる。俺を本当の俺に変えてくれる。映画や本があるからこそ、俺は俺自身を取り戻して、夢を忘れないでいられた。だから、その度に感じたことの1つ1つを忘れないようにノートに書き留めれば、その分だけ夢に近づくことができるはずだ。俺は本当に変わることができるんだ。 俺の夢は写真家になることだ。このノートが、いつか俺の夢を叶えてくれることを信じている。
3月26日
ある漫画を読んだ。とりあえず今、ジョン・コルトレーンを流している。なんだかそれっぽいし。この主人公は本当に強い。どんな状況でも挫けないし諦めないし、常に自分にしっかりした芯があるから前を向き続けられる。言葉に出すからこそ夢の輪郭ははっきりしてくる。だから俺もそうしよう。今の俺はただの社会人3年目。俺の代わりなんて探せばどこにでもいるんだろう。でもそれが俺の人生だとは信じたくない。このままじゃいけない。俺は写真家になるんだ。写真家になる。写真家になる。俺は変わったんだ。俺の夢はここから始まる。
4月1日
ある小説を読んだ。この主人公がいたのは惰性の世界だ。俺はドラッグなんてやってないけど、惰性で生きていることには変わりない。同じ時間に起きる。同じ時間の電車に乗る。同じ道を歩く。物、場所、景色、人、会話、全てが同じだ。そして家に帰って寝るだけ。今日の帰りの電車で隣にいたおっさん。眉間にシワを寄せて目を瞑って、人混みを耐え忍んでいた。合成繊維のスーツはヨレヨレで色褪せてて、でももしかしたら、このおっさんは俺の未来なのかもしれない。そう感じた。俺もこの世界から抜け出さなければいけない。生きているという実感は、俺の夢の先にこそあるんだ。
4月6日
ある映画を観た。なによりまずブラピのタバコの吸い方がかっこよすぎないか?あまりにも画が良すぎる。俺も真似してみよう。
「お前は自分のやりたいことをしているのか?」
今、この映画の問いは俺の全身を巡っている。今までの俺は何をしていたんだ?俺のやりたいことは「歯車」になることだったのか?周りのやつらはそうだ。いつも気にしてるのは自分じゃなくて周りからの目。賢そうな言葉を使って集団に群れている。どうせ何も考えちゃいない。そういえば今日俺を怒った先輩。どうせあいつもone of themでしかないんだ。今の俺は他の奴らとは違うし、今までの俺でもない。たしかに俺は変わった。身体の奥から力が湧いてくる。俺は俺のやりたいことをやろう。俺の人生は俺だけのものだから。
4月8日
ある映画を観た。今日は疲れたからもう寝る。気づいたらこんな時間だ。明日も朝は早い。もう4時間しか眠れない。とりあえず映画を1本観れたし。なんとか今日は乗り切った。
がんばろう。
4月15日
卒業文集を読んだ。本棚の奥から偶然出てきた。懐かしい。俺は小学生の頃からカメラに関わる仕事をしたかったらしい。報道カメラマンに興味があったんだな。お小遣いを貯めて一眼レフを買うなんて、子どものくせに大きなことを言っていた。今思えば、俺には無理な話だ。
今の俺がなりたいのは報道カメラマンじゃない。人の何気ない日常を切り取るような写真家だ。
4月19日
ある漫画を読んだ。色んな感情を抱えながらも、弟に導かれて夢へと向かう兄。その姿に勇気をもらった。挑戦は今からでも遅くない。今から頑張っても無駄じゃない。現実というのは恐ろしいものだ。人混みの中で生きていると、気づいたら俺は夢のことを忘れている。俺の夢が、そして俺自身までも消えてしまいそうになる。でも、この漫画を読んだときのように、その度に俺は何度も自分を取り戻す。大丈夫だ。今度こそ変わろう。いつからでもスタートは遅くない。俺は絶対に写真家になる。
4月25日
また開いてしまった、卒業文集。読み返してみると、小学生なりに俺はちゃんと将来のことを考えていた。どういうカメラマンになりたいのか。そのためにどうすればいいのか。
子どもなりに頑張ってはいたんだな。
今の俺は何をすればいいんだろう。写真を撮ることやコンテストに応募すること。もちろんやるべきことはわかっている。でも何もできていない。
どうして今まで頑張れなかったんだ?今まで何度も「変わろう、変わろう」と言い続けて、何一つとして俺は何も成し遂げていない。今までの俺は何をしていたんだ?いつになったら変われるんだ?変わらなければいけない。 頑張るしかないんだ。
4月29日
ある映画を観た。無実の罪に着せられ、それでも理不尽な状況で希望を持ち続ける主人公、これくらいの不屈の精神が今の俺には必要だ。この主人公は大きなことを成し遂げた。でも俺は何も成し遂げていない。このままじゃダメなことはわかってる。何としてでも俺は変わらなければいけないんだ。俺を閉じ込めているのは理不尽な状況ではなく俺自身だ。脱獄なんて簡単じゃないか。でも俺にはそれができなかった。もう自分が嫌になってくる。俺はずっと、今の俺のままなのかもしれない。
4月30日
そうか、違うんだ。昨日までの俺はただ「変わらなければいけない」とだけ思っていた。でもこの考え方が間違っている。 変わろうと意識してしまうからダメなんだ。ただやみくもに「変わろう」と言うだけで、俺はその中身を考えてこなかった。でもそれだけじゃ何も変わらない。今の自分と向き合って、やるべきことをもっと具体的な形にして、そして行動に移さなければいけない。卒業文集の俺がそうであるように。 今の俺は何になりたいんだろう。何をすればいいんだろう。 俺は写真家になりたい。人の日常や生活感を切り取る、感覚に訴えるのではなく感触を伝える、そんな写真家になりたい。 どこに行くときも常にカメラを持ち歩く。自分の感性と技術を磨くために常にアンテナを張っておいて、そしてすぐに写真に収められるようにする。やるべきことは他にもたくさんあるけど、まずはここから始める。 この俺の卒業文集を書き直そう。今の俺の夢とやるべきことを文字に起こして、忘れないために。今後の俺の指針にするために。今から書き直す。今の時刻は23時48分。 そして明日だ。明日は思い切って有給を取ろう。何とかなる。明日は朝の10時に家を出る。近くの公園に行って写真を撮る。何を撮るかは分からない。カメラはもう玄関に置いておく。 小学生の俺が教えてくれたんだ。変わるとか変わらないとか、そんなことは考えなくていい。そんなことを考えていてもしょうがない。目の前の現実は何も変わらないから。ただ俺は、自分のやるべきことに集中するだけだ。