MENU
  • TOP
  • 新着記事
  • 連載・特集
  • インタビュー
  • コラム
  • フリーペーパー
  • 早稲田リンクスについて
  • お問い合わせ
タグ
27th AI ERIFF HIPHOP OB・OG PR YouTuber ありのまま アニメ アーティスト オタク カルチャー サブカル サークル ジェンダー デザイナー トルコ パフォーマー ファッション ポッドキャスト メイク ラジオ ラッパー 二項対立 代表取締役 写真 動画 多様性 対話の向こうに 抵抗 教授 旅 早稲田リンクス 早稲田祭 朝 本屋 欲望 漫画 監督 繊維研究会 芸術 言葉 韓国 音楽 飾る
WASEDA LINKS
人と情報の交差点
  • TOP
  • 新着記事
  • 連載・特集
  • インタビュー
  • コラム
  • フリーペーパー
  • 早稲田リンクスについて
  • お問い合わせ
WASEDA LINKS
  • TOP
  • 新着記事
  • 連載・特集
  • インタビュー
  • コラム
  • フリーペーパー
  • 早稲田リンクスについて
  • お問い合わせ
  1. ホーム
  2. コラム
  3. こうして、これからも。

こうして、これからも。

2022 11/05
VOL. 抵抗 コラム
ありのまま 抵抗
2022年11月5日
  • URLをコピーしました!

時として、人は受け入れがたい現実に抵抗しなければならない。

——カメラを始めたきっかけはなんですか。    

大学でカメラのサークルに入ったのがきっかけです。でもそこから写真を始めたというわけではなくて、もともとスマホとかではよく写真を撮っていました。

 なぜ彼がカメラのサークルに入ったのか、その理由は忘れてしまった。

写真を撮ることは好きだが、特別な感情があったわけではない。おそらく、他に入りたいサークルが無かったとか、新歓が楽しかったとか、そんなところだろう。彼はそのサークルでFという人物に出会った。

——写真そのものへの魅力は以前から感じていたということですか。

そうですね、いつからかはわからないんですけど。でも、なんなんでしょう、絵画とか音楽とか、いろんな芸術の形態があるうちの1つとして写真が好きというわけではないんです。

写真でなにかを表現しようと思ったことはなくて、目に写った光景をただ“ありのまま”に収めたいという気持ちが強くあります。

 ”ありのまま”は、彼の写真論を理解するうえで最も重要なキーワードだ。彼とFは特段仲が良かったわけではない。同じサークルの、数ある友達のなかの1人。Fもそう思っていたはずだ。

——カメラについてのこだわりはありますか。

 それが無いんです。“ありのまま”に撮れるなら正直なんでもいいというか、性能にこだわりはないですね。

正直、スマホでも変わらないと思っています。カメラの方が多少撮りやすいというぐらいで。サークルに入ったときに買ったカメラを今も使い続けていて、その1台しか持ってないですね。

  今、彼はカメラを2台持っている。

——“ありのまま”に撮るとはどういうことですか。

 俺が目で見た世界を、見たようにそのまま写真に収める、それに尽きます。カメラの性能にこだわりがないのはそういうことで、技術的に手を加えるとしたら、俺が見たままに近づくように光を調整するくらいですね。

 写真としてより良く見せようと光や角度を調整することを、彼は忌避している。彼によると、そのような調整を経て撮られた写真は、撮影者が見たいように見た世界、恣意的に歪められた世界を写し出しているという。

大学時代に一度だけ、彼とFは写真を撮る姿勢について意見がぶつかったことがある。“ありのまま”に写真を撮る彼に対し、見たいように世界を見る、撮りたいように世界を撮るのがFだった。酒の席でのいざこざでしかなかったが、2人は真剣だった。Fは言った。

「どうして“ありのまま”に写真に収めようなんて考えるんだ。俺にはできない。写真だからこそ理想の世界が作れるんじゃないか」

——“ありのまま”に撮る上で大事なことはなんですか。

 被写体を探そうとしない、ということです。俺が被写体に良さを見出すのではなく、良い被写体に出会うという感覚があるんですよね。だから、「こういうものを撮ろう」とか、もっと言えば「写真を撮ろう」とか思っていると、良い被写体には出会えないことが殆どです。

自然と出てきた、被写体への「良い」「撮りたい」という気持ちが重要で、街を歩いているときとか、何気ない日常の中での偶然の出会いを大切にしています。被写体の良さは被写体そのものにあって、俺がそれを発見して、“ありのまま”に写真に収めるというそれだけなんです。 

 極端なことをいえば、彼が重視するのは被写体との出会いであって、写真に収めることは後付けの作業に過ぎない。ちょうど一週間前、彼はFと久しぶりに再会した。「久しぶりに飲もう」とFから彼に連絡が来たのだ。サークルを引退して以来だから約5年ぶりだろうか。Fは何も変わっていなかった。サークルでの思い出、お互いの近況、今だからこそ言える小さな秘密など、懐かしい人との会話は実はありきたりなものばかりだ。別れ際、突然Fは彼にカメラを手渡した。大学時代にFが使っていた見覚えのあるカメラだった。

 「お前に持っておいてほしいんだ」 

 「どうして?」

 「それは上手く言えない。持っておいてほしい」

 意味がわからなかった。なぜカメラなんか手渡すのだろうか。カメラの話なんてしなかったはずだ。理由を聞いても、Fは「持っておいてほしい」と頼むばかりで、明確に答えてくれない。彼はFが理解できず、困惑していた。とはいうものの、別にカメラを持っておくことは難しいことじゃない。強く断る理由はない。

 「いつ返したらいいんだ」

 「……」

 「また連絡してほしい」

そうして彼はFと別れた。 

——ご自身にとって“ありのまま”は揺るぎないテーマなんですね。

 そうですね。ずっと一貫してます。

 Fはこのカメラを渡すために会ったんだと、今になって思う。

——ですが、それには限界があると思います。

 というと、どういうことですか。

 でも、なぜFが俺にカメラを渡したのか、それは今でもわからないままだ。

——鑑賞者の立場になるとどうですか。

 鑑賞者の立場、ですか。

 思い出した。酒の席で俺とFが言い合ったあのとき、1つだけ意見が合致したことがある。それは、写真を見る人のスタンスについてだった。鑑賞者は自由に写真を見ていい。“ありのまま”を写した俺の写真にしろ、見たいものを写したFの写真にしろ、それをどう受け取って何を感じるかは鑑賞者の自由だ。写真の枠の中にあるもの、それは所詮「目で見えているもの」にしかすぎない。鑑賞者はそれをもとに想像を膨らませることができる。そこに撮影者は介入できない。俺とFはそこで結託したような気がした。

——鑑賞者の立場に立ったとき、ご自身も見えないものを想像することはありますか。

 そうですね。写されたものだけで写真を理解することができないときに、想像するんだと思います。俺にとっては難しいことです。

  想像せざるを得ないときというのは、見えているものだけで理解することができないときだ。そしてそのときは突然やってきた。Fが自殺したと俺が聞いたのは昨日の昼過ぎ、サークルの別の友人の電話からだった。自殺の理由は誰にもわからないらしい。電話を切ったあとしばらく、Fが自殺したという事実を、素直に受け入れることができなかった。ただただ理解ができなかった。やっぱり嘘かと思って折り返したが、事実は変わらなかった。Fは自殺した。

——”ありのまま”に見るだけではわからないことがあるということですね。

 そうです。俺はあなたがわからないんです。 どうして自殺なんかしたんですか。どうして俺にカメラを渡したんですか。この変わらない事実を、現実ただそのものとして、”ありのまま”に受け入れることができないんです。俺はあなたがわからないんです。

 Fはもうこの世にいない。なぜ自殺したのか。なぜカメラを渡したのか。俺はFに聞くことはできない。なぜならこの世にいないのだから。だから俺はFを想像するしかない。

——私はもうこの世にいません。

 あなたはもうこの世にいません。俺と再会したとき、あなたは何も変わっていませんでした。でも、なにか辛いことでもあったんじゃないですか。俺になにか言うべきことがあったんじゃないですか。もしかしたらできたことがあったのかもしれないのに。あのとき俺は、よくわからないままあなたのカメラを受け取ってしまいました。その理由をしっかり聞いておくべきでした。問いただすべきでした。これらの答えは、俺が自分で見つけるしかなさそうです。

 Fがもうこの世にいないということは、俺は自由にFを想像できるということだ。なぜ死んだのか。なぜカメラを渡したのか。それがわからないからこそ、俺は自由に想像する。その想像に合わせて、Fという人間の姿は変化し、そうして俺はFを受け入れる。見えないものを想像するとはこういうことだ。

——あなたは私のカメラを持っています。

 受け取ったこのカメラが、俺のわだかまりを解くヒントになるかもしれません。明日どこかへ行って、このカメラで写真を撮ってこようと思っています。あなたががあのとき言ったように、見たいものを見たいように見て、撮りたいものを撮りたいように撮る。そうしたら、俺はあなたに近づけるかもしれません。どうでしょうか。

 Fが自殺したこと。Fが俺にカメラを渡したこと。その答えは見つかるかもしれないし、見つからないかもしれない。そもそも答えなんて無いのかもしれない。答えは俺が作り出すものだ。もうFはいないのだから。だからこそ、俺はFを想像する。これがFにとっての救いになればいいと思っている。いや、これは俺のための救いなのかもしれない。いや、いや、もういい、Fはもういないんだった。俺にはまだ時間が必要らしい。

 今日は遅いからもう寝よう

受け入れがたい現実に直面したとき、それが抑圧になったとき、人は抵抗する。

しかし、その抵抗が必ずしも正しいものとは限らない。もし自らの抵抗の形に行き詰まったなら、違う抵抗の形を模索しなければならない。抑圧が完全に消えない限り、抵抗が終わることはない。

考えながら、苦しみながら、そのかたちを変えながら、人は抵抗し続ける。

今日を乗り越え、明日を迎える。こうして、これからも。

VOL. 抵抗 コラム
ありのまま 抵抗

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

Follow @wasedalinks Follow Me
  • URLをコピーしました!
  • 恐怖を焚べる ファイヤーパフォーマー 和泉英幸
  • 【PR】映像によって動き出す未来 ビヨゴンピクチャーズ代表取締役 寺嶋章之

関連記事

  • 拝啓、彼へ
    2022年11月5日
  • 名前のないままで 漫画家 林史也
    2022年11月5日
  • 描き、放たれる思い アーティスト 今恵美子
    2022年11月5日
  • アンビバレンスと対峙する ポッドキャスト配信者 こみやまよも
    2022年11月5日
  • 揺らぎながら、生きていく ソーシャルワーカー 神原由佳
    2022年11月5日
  • 恐怖を焚べる ファイヤーパフォーマー 和泉英幸
    2022年11月5日
  • 【PR】映像によって動き出す未来 ビヨゴンピクチャーズ代表取締役 寺嶋章之
    2022年11月5日
カテゴリー
  • インタビュー
  • コラム
  • 対談
タグ
27th AI ERIFF HIPHOP OB・OG PR YouTuber ありのまま アニメ アーティスト オタク カルチャー サブカル サークル ジェンダー デザイナー トルコ パフォーマー ファッション ポッドキャスト メイク ラジオ ラッパー 二項対立 代表取締役 写真 動画 多様性 対話の向こうに 抵抗 教授 旅 早稲田リンクス 早稲田祭 朝 本屋 欲望 漫画 監督 繊維研究会 芸術 言葉 韓国 音楽 飾る
人気記事
  • 漫画『月のお気に召すまま』木内ラムネ先生に聞く「トキメキの作り方」
    インタビュー
  • 早稲田リンクス3代目幹事長、メルカリ創業者・山田進太郎氏が語る「初めてのリーダー経験」
    インタビュー
  • 『劇場版スタァライト』監督 古川知宏を燃やす“燃料”
    インタビュー
  • 名前のないままで 漫画家 林史也
    抵抗
  • 日常を描く、日常を創る 漫画家 眉月じゅん
    朝
新着記事
  • 本屋を航る、本屋と渡る 第六回『七月堂古書部』
    本屋を航る、本屋と渡る
  • 本屋を航る、本屋と渡る 第五回『あんず文庫』
    本屋を航る、本屋と渡る
  • 本屋を航る、本屋と渡る 第四回『タバネルブックス』
    本屋を航る、本屋と渡る
  • 【PR】映像によって動き出す未来 ビヨゴンピクチャーズ代表取締役 寺嶋章之
    抵抗
  • こうして、これからも。
    抵抗
目次
カテゴリー
  • 27th
  • VOL.
  • インタビュー
  • コラム
  • ニュース
  • 二項対立を考える
  • 対話の向こうに
  • 対談
  • 抵抗
  • 朝
  • 本屋を航る、本屋と渡る
  • 欲望
  • 連載・特集
  • 飾る
ページ
  • TOP
  • 記事一覧
  • 連載・特集
  • フリーペーパー
    • 『WASEDA LINKS』vol.44 抵抗
  • 早稲田の杜
  • LINKS FAVORITE
  • 早稲田リンクスとは
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー

© WASEDA LINKS.

目次
閉じる