身体とは、自分自身の表象である。今日はどんな色の服を着ようか、どんなメイクをしようか。朝身支度をする時間に、その日どんな自分を演じるか考える。身にまとう装飾で、自らの身体に理想を体現すること。それは自分の内なる欲望を身にまとうことそのものだ。内なる欲望を声高に叫ぶ不安を超え、自分らしさを肯定するためには何が必要だろうか。
メイクアップアーティストとして活躍するZuttiさんからその輝きの理由を探った。
—— メイクを始めたのはいつですか。
メイクを始めたのは小学校四年生の時ですね。
女子プロレスラーのブル中野さんという方がリングに上がっているときのメイクが印象的で、真似して顔に水性顔料でペイントしてみたのが最初です。
それからは、ママにもメイクしてもらっていました。
椿鬼奴さんのノーズシャドウががっつり入ったメイクに憧れて、ママに「自分にもこのメイクして!」とお願いしたこともありますね。
最初はこんな顔してみたいな、という興味本位でした。
—— Zuttiさんにとってメイクをする意味とはなんでしょうか。
強くなることです。
すっぴんで出かけるよりもメイクをして出かけたほうが前を向いて歩けます。
例えるなら、自分の鎧みたいな感じです。
それに、メイクをすると喋り方も所作も全て美しく変わりますからね。
—— Zuttiさんが目指す美しさとは、どのようなものでしょうか。
優雅さ、エレガントさのみです。
メイクは毎日変わるので、一か月前の自分と今日の自分が全然違うことに驚くこともあります。
言葉遣いや所作に至るまで、日々美しさを追求しています。
—— 美しくなりたいという欲望はどこから湧いてくるのでしょうか。
今では好きが高じてお仕事に繋がっていますが、Zuttiはただ自分のやりたいことをSNSに載せているだけです。
誰かのためではなく自分のために生きているので、メイクするのも誰かのためではなく、自分の理想のためです。
—— Zuttiさんの美しさの基準はどこにあるのでしょうか。周囲からの反応や評価を気にしてしまうことはありませんか。
周りから褒めていただくことも基準のひとつですが、自分が美しいと思えばそれは美しいのだと思います。
それが間違っていようが間違っていなかろうが、どちらでもいいんです。
Zuttiの場合は、「今日も自分きれいだな」とか「美しいな」と言い聞かせていました。
脳みそって本当に単純なので、「今日はきれいだ」と思ったら自然にお顔も晴れてくるし、視線もどんどん上に向いていくし。
どうしても自信のない方って猫背になったり首が下に向いたりしますが、もう胸を張って顔を上げる。
そうすることで凛としますし、シャキッとしますから。
それだけで心持ちも顔も本当に変わるので、ぜひやってみてほしい。
それに、 「人の視線は自分のビタミン剤」とデヴィ夫人がおっしゃっていたことがあるのですが、自分も人に見られることによってどんどん美しさが増すと感じています。
だから人からどう思われるかということは、自分はあまり気にならないんです。個性は出した者勝ちですし。
それに、無数の人の中でも「あの人がZuttiだ」ってわかるくらいのオーラがあるという自信もあります。
—— 男性がメイクすることに対して、周囲からの反応に困惑した経験はありますか。
ありましたありました。
周囲からの反応を受けて、自分は女性になりたいのかなと実際に思ったこともあるんです。
でも、男性女性だけにとらわれず、自分らしさを大切にすることで乗り越えました。
周囲には、「Zuttiという性別がある」と言われます。
それは自分であるということです。
実際Zuttiは男性でも女性でもどんな方でも、人として尊敬できる方が好きです。
人からなんと言われようが、ここまで美しさを追求していれば本当にどうでも良いんです。
ただ、「メイクをする男性=女っぽい」といった認識を作り上げたのは旧来のメディアでもあるので、その認識を自分たちが変えていかなくてはとは思っています。
—— 自分らしさを大切にされているのですね。
そうですね。それでも、自分らしさとは何かを見失ってしまうこともあります。
そうなった場合は、一旦すべてを休みます。
自分の場合はSNSを休んで全てを真っ暗にして、自分らしさってなんなんだろうなと考えるんです。
一旦病んで、落ちるところまで落ちたらあとは這い上がるだけなので。
あとは美容室やエステに行ったり、お洋服を買ってみたり、自分自身にお金をかけます。
お洋服を見て「これかわいいな」と思ったら、自分はこういう服が好きなんだなと自分を見つめなおすこともできます。
多分皆様も、無意識にしているんじゃないでしょうか。
—— 自分らしさを肯定し、自分を好きになるためには何ができるでしょうか。
なりたい自分になってみることです。
使ってみたいアイシャドウや挑戦したいメイクがあるなら、おうちでちょっと研究してみればいいんです。
それでどこかへ出かけろと言っているわけではなくて、自己満足だけでいいんですよ。
なりたい自分になって鏡の前に立ってみる。そのときのお顔って底知れぬ美しさや自信があるんです。
日本人の方は特に自己肯定感が低いほうだと思うので、自分はきれいだと言い聞かせることです。
不細工な人なんていません。
自分がきれいだと思ったらきれいになりますし、笑った顔が誰しも一番きれいなんですよ。
だから笑顔でいることが本当に大切だと思います。
こうやって生きていること自体が奇跡だから、自分に自信を持つことです。
すべての自分を愛することが一番なんじゃないでしょうか。
—— Zuttiさんの今後の目標を教えてください。
ニキータ・ドラゴンというコスメブランドを立ち上げた、トランスジェンダーの方がいます。
その方がまさにZuttiのなりたい人物像そのものです。
Zuttiは女性になりたいわけではないのですが、なりたい自分になれていること、それからコスメブランドを立ち上げているという点で憧れています。
Zuttiは今年で23歳になりますが、25歳になるまでに絶対にコスメブランドを立ち上げるということを目標にして生きています。
コンセプトは誰でも使うことができるコスメブランドです。
例えば、ちょっと内気な方や、Zuttiのような方など、どんな方でも自分らしさを表現できるコスメを作るのがZuttiの使命ですね。