—— 古着を材料として使うYEAH RIGHT!!の強みとはなんでしょうか。
河村:
古着を材料として使う以上、まったく同じものは作れないという限定性があることですね。
例えば、同じ型のパーカーを10枚作ったら部分的に模様や柄が違うものになります。
だから少しずつ違った商品の中から、お客さんが好きなものを選ぶことができるし、バイヤーさんがお店の雰囲気に合わせてセレクトすることもできるんです。
また、買い手がより自由に服を選べる取り組みとして、「COMMON SLEEVE」というプロジェクトを行いました。
これは、袖とボディにファスナーを取り付け着脱可能にすることで、お客さんが服の間で袖を自由に交換できるようにしたものです。
それ以前からYEAH RIGHT!!のコレクションでは、トレンチコートのボディにデニムジャケットやスウェットの袖を付けたアイテムを発表していましたが、その組み合わせをお客さんが自分で選べたらもっと楽しいのではないかと思ったんです。
はじめはYEAH RIGHT!!のアイテムだけでしたが、次第に友達や先輩のブランドにも参加してもらえるようになり、ブランドの垣根を越えて袖を交換できるシステムができました。
僕らが選択肢を提示して、買い手が自由にものを選んだり編集したりできる。
その自由度の高さが、YEAH RIGHT!!に特有の強みかなと思います。
製作背景を知る
—— ブランドを運営するうえで環境問題への意識はあるのでしょうか。
井村:
もともと環境問題への意識からリメイクを始めたわけではありません。
しかし昨今サスティナビリティ(持続可能性)という言葉がよく言われるようになり、私たちも服に携わる立場として、その製作過程を根本から知ることは大切だと考えるようになりました。
そこで始めたのが、「KNOW COTTON PROJECT」です。
農業の「農」と知るという意味の「know」をかけて名付けました。
これは、自分たちで綿を育てるところから洋服を作ることで、どのような背景で服が作られるのか身をもって知るという取り組みです。
河村:
このプロジェクトでは和綿を使ってTシャツを作りました。
その過程はなかなか大変で。
和綿は今自給率0%で、産業として成り立っていません。
私たちはそんな和綿を「耕さない、除草しない、肥料を与えない、農薬を使用しない」ことを特徴とする自然農で栽培しました。
しかし綿の収穫量は10キロ程度と、服を作るのにはあまりに少ない量だったんです。
それをなんとか糸にしてもらって、結局大人用のTシャツ1枚、子供用のTシャツ1枚を作るのがやっとでしたね。
本当は10万円で売っても元は取れませんが、誰かに買ってもらうことに意味があると思ったので3万円という価格で店に出しました。
プロジェクトの発表イベントでは、綿を育てている風景や製作過程の写真を展示しました。
ただあの時気を付けていたのは、あまり説教臭いものにならないこと。
環境意識の有無に関わらず、純粋に洋服が好きな人の関心を引かなければ意味がないと思ったんです。
だから「DESPERADO」という渋谷のセレクトショップでイベントを行い、イメージビジュアルも都会的な雰囲気で作りました。
あくまでファッションの一環として興味を持ってもらい、その上で服ができるまでの経緯を知ってもらいたいという思いがありました。
—— 服を作るためには、それだけの労力が必要になるのですね。私たちがそうした経緯を知るだけでも、服への接し方は変わるのではないかと思います。
河村:
そうですね。一つひとつの服の重みを理解してもらえれば良いと思います。
服の製作背景が分かれば、簡単に捨てる気にはなりませんよね。
ただ、最近は服を循環させようという意識が強くなってきているようにみえます。
着なくなった服を捨てるのではなく、ブランド古着店に持って行ったり、フリマアプリに出品したりする人も多くなってきました。
そういうシステムが充実してきたことを考えると、良い時代になったなと思います。
こうした流れのなかで、僕らも多くのブランドやショップが抱えている在庫を回収し、リメイクするというプロジェクトをやろうかと考えています。
今はどこのブランドやショップも売れ残った洋服の処理に困っている状態です。
そうした洋服をリメイクし、新しい形で販売するイベントを開けたら面白いのではと思います。