——ファスト映画についてのお話がありましたが、あの事件をきっかけにネット上では「大量の作品を短時間で消費するような視聴方法の是非」についての議論が起こっていました。おまブラは以前「倍速視聴アリナシ」の動画を投稿されていましたが、映画を倍速で見るという選択肢について考えられていることはありますか。また10分でわかる解説動画とファスト映画はどういった点で違うのかについても教えてください。
本田:僕たちは、最終的には作品を観てほしいという気持ちで動画を作っています。僕たちの動画を通して作品に誘導するようなイメージ。
「10分でネタバレをする」というコンセプトではないですからね。
池田:そもそも僕は作品の知識だけを手に入れたいっていう気持ちが全くわからないから、動画を観て作品も気に入ってくれた人は作品まで見てくれていると思い込んでました。
でももしかしたらいるんですかね、この作品ってこうなんだ、それだけわかったから満足って人も。
矢崎:いるでしょ。
本田:いるよ〜いるいる。本田も結構そういう時あるからな。
動画ではやらないですけど、アーティストの立ち位置とかある程度知れたら、人と話しちゃうことあるからね。
あんまり聞いたことなくても、この曲いいっすよねとか言って。
池田:コミュニケーションの手段としてってことか。
本田:オタクと思われたい気持ちってすごいわかるんだよな。
僕はオタクじゃないけど、周りにはオタクがすごく多い。
だから憧れがあるんですよね。
オタクになるためには大量の作品をちゃんと観なきゃいけないけど、その人たちが今までかけてきた時間を自分の今の人生では使えない。
それなら倍速で見れば…みたいな気持ちはすごくわかる。
だけどその方法じゃ絶対になれないですよね、オタクには。
ちゃんと作品を観て蓄積してきた人たちとは、量の問題ではなく、質の点で違ってくる。
——動画の引用元や準備にかける労力を教えてください。
矢崎:基本的に喋りたいことがあって裏を取るっていう感じですね、僕は。
裏を取るのにネットとか本を使うことが多いです。
一本の動画の準備に累計6時間くらいはかかりますね。
二日くらいに分けてやってます。
本田:間違ったことを一つでも言っちゃうと視聴者の頭の中にノイズが生まれちゃうと思うんですよ。
それだと動画に集中できなくなってしまう。
だから下準備はちゃんとしたいと思ってます。
あと内容がインターネットで調べたことだけの動画は本当にハネないんですよ。
ネットには大量の情報が転がっているけど内容として深いことまでは載っていないから。
以前友達に「Wikipedia読んでるだけの動画あるよね」って言われてすごく悔しかった。
そういうことやっちゃいけないなって思いました。
再生回数が上がる動画は、本の情報とかパッション、あと友達が言ってた意見が入っているものですね。
大切なのは「生の意見」であることなのかなって思ってます。
インターネットの外側に存在する生の声を持ってきてようやく人を惹きつけることができるんです。
だからできるだけ取り扱うアーティストのことを好きな友達から話をきいて温度感を確かめたり、本を読んだりするようにしています。
——視聴者からの信頼を得るために意識していることは何ですか。
本田:僕は自分が本当に良いと思ったものにしか良いと言わない。
これはもうどんなことがあっても絶対そうです。
おませちゃんブラザーズで紹介してたから読もう、観ようって言ってくれる人が増えることが最高な状態なんです。
そのためには自分が本当に良いと思ったものを紹介して、それを信頼して買ってくれたり観てくれるっていう関係をすごく大事にしたいんです。
自分の好きなものしかやらない、嘘をつかないことは徹底しています。
あと動画を作る上で僕らが一手間かけることが大事だと思うんですよね。僕たちが視聴者の代わりに調べてまとめた手間に価値や信頼感が生まれると考えています。
矢崎:俺は信頼を得るために何かを意識したことはないけど、ヤバいことは言わないようにはしてます。
本当は偏った思考を持っているんですけど、うまい隠し方や見せ方ができるように気を配ってます。
本田:気をつけていないと、例えばおませちゃんブラザーズのTシャツを着ている人に迷惑がかかってしまうんですよ。
「ああいうこと言ったYouTuberのTシャツを着ているってことはそういう考えの人なんだな」って思わせることはインフルエンサーとして論外なので。
攻めの姿勢を出すにしても小出しにしてます。
矢崎:ぼく動画では女嫌いって言ったりするんですけど、別に本当は嫌いじゃないんです。
本田:嫌いじゃないんかい。
池田:じゃあ言うなよ。
本田:確かにアイドル好きなんだもんねえ。
矢崎:アイドル好きって言いつつ女嫌いってちょっと面白いじゃないですか。
好きじゃないけど受け入れられるものに対してしか嫌いって言わない。
受け入れられないものに対しては触れないようにしています。
池田:俺は信頼されるために、笑ってもらえるところを何箇所作れるかっていう感じですね。
矢崎:いいねー池田だね。
本田:そういう信頼ももちろんあるよね。
池田:僕らのチャンネルみてる人は、他にはお笑いのチャンネルとか観てるみたいだし、面白い動画が好きなんだろうなって思います。
笑えるもの作りたいなと思ってます
本田:それはすごくカッコいい。
クリックした瞬間から動画終わるまで観ていて意味あるものにはしたいな。
確か1回動画の尺を伸ばしたくて、エンディングの曲を2回流しちゃったことはあるんですが…。
でもそれ以外の時は尺稼ぎはしないようにはしてます。
余計なシーンを入れないことはYouTubeのアナリティクス的にも大事だし、観てくれている人の時間も大切にできる。
あとプライド的にも入れたくない。
1秒1秒に意味ある。
自分たちではそう思って作っています。
後編につづく…