第一印象は曖昧だけど、たいしてよかった覚えはない。
胡散臭い笑顔と矢継ぎ早に飛び出るわざとらしい褒め言葉。
正直あまり好きなタイプではないだろうと思った。
はじめて彼の素を見たのは、彼が同級生らしき人と一緒にいるのを見かけたときだ。
そうやって年相応に笑ったり、素直に感情を表現したりできるんだと驚いた記憶がある。
それから彼のことが気になって、彼が本当はどんな人間なのか考えるようになった。
負けず嫌いでプライドが高いこと。
その裏には血の滲むような努力があること。
キラキラした功績の影にはたくさんの失敗もあったこと。
その度に反省して自分を磨き続けていたこと。
褒めるのは得意なのに褒められるのは苦手なこと。
彼について一つ知るたび、私に見えていたのは彼のほんの一部だったと思い知る。
胡散臭い笑顔でさえ可愛いと思う頃にはもう好きになっていた。
彼女は、とある二次元キャラクターに恋をしている。
そう聞いて今あなたは何を思ったか。
二次元キャラクターは架空の存在だ。
実体も人格もない。
話す言葉はすべて誰かの作り物だ。
住む世界も違う。
けれど、彼らにも物語がある。人生がある。
私たちは、小説や漫画、アニメをみて登場人物に共感したり、
ドキドキしたり、嫉妬心や嫌悪感を抱いたりする。
そのとき抱く感情は、生身の人間に対するものと何が違うのだろうか。
そのとき、彼らの言葉が、人生が、存在が、誰かによって作られたものであることを意識するだろうか。
抱く感情が同じなら、それが実在するかどうかは重要なのだろうか。
そこに二次元と三次元の境界はあるのだろうか。
彼女の恋に、あなたは何を思うか。