気孔が塞がれ、呼吸ができなくなった街路樹。
逃げ惑い、全身にやけどを負ったコアラ。
腹にプラスチックをため込んだ海鳥の死体。
私は目撃していた。
変わり果てた世界に抗えない彼らを。
生き抜く彼らの強ささえねじ伏せたその醜さも。
絶滅危惧種に指定された野生動物の種数:4万4,016種
森林が減少する速度:1分間に東京ドーム1.9個分
海に流れ着くゴミの総量:1年間に800万トン
私は音もなく壊れていく彼らの存在を無視した。
目撃していたはずなのに、知ろうとしなかった。
彼らの周りに渦巻く出来事は常に他人事で、
画面に流れてくる現実から目をそらすのは簡単だった。
目の前の、キラキラした刺激には敏感で、
輝いて見えいなければ気にも留めない存在にすら気づかない。
見たいものだけを見て、欲しいものだけに手を伸ばすこと。
私の醜く愚かな部分であり、切り離せない性質。
衝動的で短絡的な欲望は何を生むのか。
生むんじゃない。殺したんだ。
私がそっぽ向くあいだに彼らは消え去った。
今、彼らの悲鳴が頭の中で反芻している。
悔やんでも悩んでも彼らは戻らない。
消えたものは消えた。
私は消えた彼らの恨みを
そして、まさに今もがき苦しむ彼らの恨みも
一身に受け止めなければならない。
参照
国際自然保護連合「IUCN RedList of Threatened Species」
林野庁「世界森林資源評価(FRA)2020 メインレポート 概要 」
日本財団ジャーナル「2050年の海は海よりもごみが多くなる?今すぐできるアクション」
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