はじめに

『お笑い第七世代』、『賞レース』、『ひな壇』・・・このような単語やフレーズを、あなたはテレビや雑誌などで目にしたことがあるでしょうか?おそらく、テレビ、特にバラエティが好きな方は、一度はこのような単語を聞いたことがあるでしょう。そうでない人も、最近は多くの芸人がバラエティ番組だけではなく、ドラマや、演劇、歌番組、究極的にはニュース番組にまで、出演するようになっています。

かつて、正確に言えば、私たちの両親やそれ以前の世代の人々にとっては、『お笑い芸人』というと、主に漫才やコントなどの芸と呼ばれるものを使いながら人々を笑わせるのがメインであり、逆に言うと、それ以外の仕事は、他の職業についている人がやっていました。例えば、ドラマや演劇であれば、俳優や舞台役者が担っていたし、歌番組において、ミュージシャンや歌手以外が出演することなど言語道断でした。

しかし、時代の流れとともに、テレビに求められる役割は大きく変わり、それに伴って、芸人がなすべき仕事も多様化していきました。その背景には多くの理由がもちろんあります。YouTubeやニコニコ動画などをはじめとする、テレビ以外の媒体メディアの増加、マスコミに対する大衆の信頼度の低下、数えればキリがありません・・・。しかし、その中で、お笑い芸人のテレビにおける重要度というのもまた認知されていきます。この、原因や、そこまでの背景事情などを、何組かの芸人をピックアップしつつ、見ていこうかなと思います。

①M1グランプリの復活と、次世代芸人の台頭

 皆様は、M1グランプリという物をご存じでしょうか?そうです、年末に行われる漫才の日本一を決める日本を代表するお笑い賞レースというやつです。昨年は、マヂカルラブリーと呼ばれる奇想天外な独特の芸風の漫才師が優勝したんですけれども、その話はいったん置いておくとして、このM1グランプリは実は、芸人にとっても売れるチャンスを探すための重要な第一歩となるんですけれども、テレビ局やプロデューサーにとっても次世代のテレビ業界を担う原石を発掘するための重要な場なんです。
例えば、今やテレビで見ない日がないといっても過言ではない『霜降り明星』というコンビもM1グランプリ2018で優勝したのを機にブレイクしたコンビの一つです。もちろん、優勝しなくても売れたコンビもたくさんいます。その筆頭例が『ぺこぱ』、『かまいたち』、『和牛』、『カミナリ』、『トムブラウン』などでしょう。M1は、決勝に進出するだけでも大きな恩恵を得られる、芸人にとっても、テレビ側にとってもありがたい存在となったのです。

しかし、実はこれらのコンビにあてはまるのは、どれも2015年にM1が復活してから売れたコンビだということです。というのも、実は、このM1、2010年にいったん大会として終了してしまったのです。これは、その当時の審査委員長であった島田紳助が『いったん番組としての節目にするため』という理由で提案したものです。その後、M1に代わる賞レースとして『THE MANZAI』が開かれるのですが、これは残念ながら先ほど挙げたほどのスター性のある芸人を発掘することができませんでした。なので、この期間はお笑い不作の期間と巷で呼ばれることもあります。

しかし、テレビという物に必要なのは世代交代です。なので、テレビ局側もなるべく次世代のダウンタウンなどになれるような芸人を探す必要がありました。そこで大きな起爆剤となったのが、M1グランプリの復活です。2010年までのM1で登場したコンビよりも一回りも二回りも年齢やキャリアが若い彼らは、会場で大きな旋風を巻き起こしました。その熱量は、漫才だけでなく様々なバラエティ番組でも見られ、それが今現在の彼らの立ち位置を築き上げる礎となっていると思います。下のグラフは、今のM1におけるエントリーした芸人の所属事務所に関するグラフなんですけど、やっぱり次世代芸人として台頭してきたM1芸人は吉本所属が多いんですよね。

②お笑い第七世代の登場と、メディアの多様化

お笑い第七世代の筆頭格、もちろんほかにもいっぱいいますよ。

続いて、賞レース以外の点から今の芸人に求められている役割という物を分析していきたいと思います。『お笑い第七世代』、皆さんはこの言葉を聞いて誰を連想しますか? EXIT?、四千頭身?それともハナコ?ほかにも第七世代というジャンルに分類される芸人は、数多くいるのですが、彼らに共通して言えるのは、『令和元年の段階で、20代である』ということでしょう。

もちろん例外は存在するので、一概には定義することはできないのですが、彼らは、かつての破天荒で、力業で笑いをとるような芸人とはタイプが180度違い、どちらかといえば、第七世代の芸人みんなで協力して笑いを取ろう、あるいは番組を作り上げようとするような姿勢がみられます。

その背景にあるのは、やはりテレビ業界のコンプライアンスの重視や、BPO倫理などに配慮した姿勢が影響していると思います。今の時代、過度に暴力的な演出や、人を罵ったり、バカにしたりして笑いを取る姿勢はあまり評価されなくなってきました。

誰も傷つけない笑い』、これは昨年テレビやラジオでとても話題になったワードなのですけれども、この言葉の原点ともいえるぺこぱも第七世代としてカウントされています。彼らに共通して言えるのは、やはりYouTubeや、TikTok、そしてinstagramなどを多く活用しながら、みんなで仲睦まじく笑いを取り、そして、過度にがつがつしない、そんな姿勢がテレビにおいて評価されていると思います。そして、更にこれらの芸人に共通して言えるのは、割りと若者の代弁者みたいなところがあることだと思います。
例えばチャラ男漫才で知られるEXITは、ABEMATVが運営する、『Abema prime』という番組で、色々なニュースを扱ってそれにコメントする、ニュースキャスターのような役割を果たしているし、霜降り明星のせいやや、ハナコの岡部くんなんかはテレビドラマの『テセウスの船』だったり『エール』などに俳優として名演技を見せてくれたりしていて、それが若い人独特の反響を呼んだりしています。

つまり、ここで言いたいのは、彼らの芸は漫才やコントにとどまらず、多種多様なところでいかされているということだと思うんですよね。なので、第7世代というだけで優遇されるとかって言うことではなく、むしろ若さというパワーをバネに頑張っている姿勢が今のテレビに求められているんだと思います。

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