「仕事を始めたら趣味に割く時間が減ってしまうのではないか」「趣味を仕事にしたいけれど、周りからはやめたほうが良いと言われる」など、趣味と仕事の関係性に不安を抱えている大学生は多い。この不安はどうすれば消えるのだろうか。

劇団雌猫はオタク女子4人からなるサークル。オタクを題材にした書籍の出版やトークイベントなどの活動を行うなかで、趣味と仕事の両方に励む人々を多数取材してきた。また、彼女たち自身も、自分なりの趣味と仕事の関係性を見つけた、いわば私たちの先輩だ。不安を解消するヒントを得るため、劇団雌猫のメンバーであるユッケさんにお話を伺った。


趣味を仕事にするということ

——ユッケさんは出版社に勤められたあと、現在はフリーランスで編集の仕事をされているとお聞きしました。趣味と仕事の関係性はさまざまだと思いますが、ユッケさんの場合その関係性はどのような形でしょうか。

会社に入って間もないときは、趣味のことは考えずに仕事を頑張ろうと思っていました。というのも、社会人が趣味のためにお金を稼ぐことは邪道っぽいと感じていたんです。大前提に趣味と仕事は分けて考えるべきで、仕事は趣味より優先すべきものという考えがあったんだと思います。でもいざ働いてみると、趣味と仕事の領域が重なることがあったので、完全に分けて考えることはできないと気付きました。例えば私は新卒で漫画の編集部に配属されたのですが、好きなアイドルをイメージしたキャラクターを作家さんに打ち合わせで提案したり(笑)。そこからは、「楽しいことをしてお金も稼げたらハッピー」という思考で仕事をするようになりました。そういった思考でいると、仕事の時間が趣味の時間でもあるように思えてくるんです。私と同じことを感じている人は『本業はオタクです。』(註1)で取材をした中にも何人かいました。一見、趣味と仕事を分けている人の中にも、コンサートは月一しか行けないけれど、実は仕事中もずっと推しのことを考えているというような人がいたりして。いわゆる「オタク」のような、濃い趣味がある社会人は、どのような趣味と仕事の関係性かに関わらず、趣味にもしっかり重きを置いている人は多いと感じますね。

(註1)劇団雌猫による書籍。正式タイトルは『本業はオタクです。シュミも楽しむあの人の仕事術』(中央公論新社)。オタク女子の趣味と仕事について、インタビューやアンケートを通じて迫った一冊。

——趣味と仕事がきっちり分かれているわけではないとのことですが、一般に趣味を仕事にすると辛いと考えられていることについてはどう思われますか。

その人の性格によるんじゃないかと思います。私は今までいろいろな人の話を聞いてきて、趣味を仕事にできる人には2つのタイプがあるのではないかと感じました。一つは、趣味を仕事にすることで趣味への見方が変わってしまうことを、プラスに捉えられるタイプの人です。『本業はオタクです。』で取材したアイドル好きの芸能マネージャーさんは、まさにそのタイプでした。彼女は仕事柄、自分の推しと舞台裏ですれ違うことがあるらしいんです。推しも人間なので、舞台裏では疲れていてコンサートやテレビで見るときと印象が異なることがあるそうなんです。オタクの中にはそういった姿にショックを受けてしまう人もいると思いますが、この方はむしろ親しみを感じるとおっしゃっていました。もう一つは、趣味を仕事にすることで生まれる辛さを、楽しさが上回るタイプの人です。例えば、趣味で漫画を描いていてそのまま漫画家になった人にも、漫画を描くことを職業にしたゆえに生まれる辛さはあると思います。でもそれ以上に、自分の作品をより多くの人に読んでもらえるといったことを楽しめたら、仕事を続けることができると思うんです。

——ユッケさんはどちらのタイプなのでしょうか。

私は後者ですね。実際、編集の仕事は拘束時間も長いし、体調を崩したりして大変なこともあったのですが、自分が手がけたものが世の中に出て読者が喜んでいる姿を見るのは楽しいです。私は趣味を仕事にしてもそれを楽しめるタイプの人間ですが、実は私のようなタイプは少数派です。『本業はオタクです。』出版の際に読者にアンケートを取ったところ、趣味を仕事にしている人は全体の1.5割くらいでした。残りの人は趣味とはまったく関係のない仕事をしているようだったので、タイプはさまざまだと分かりました。     

両立のために

——ユッケさんは学生時代、仕事を始めると趣味の時間が奪われてしまうのではないかというような、趣味と仕事の関係性に対する不安は感じていましたか。

感じていました。『本業はオタクです。』のはじめにも書いたのですが、許されるなら就活の面接で「御社では趣味と仕事の両立はどのくらい可能ですか」と聞きたかったくらいでした。アイドルが好きな身としては、週末は絶対にコンサートに行きたいし、地方に遠征もしたい。普通の社会人ってそういったことができないイメージがありますよね。でもいざ働いてみると、趣味と仕事を両立している人は、会社の中にも友達にも意外とたくさんいて。結局のところ、学生のときに怖がっていたほど仕事一色にはならず、むしろ学生時代のほうがサークルもやってバイトもやって授業も受けて、しかもオタ活もしなきゃいけなくて忙しかったなと思いますね(笑)

——学生の私からすると週5で働くことが想像できないので、社会人になると自分の自由な時間が減ってしまうという感覚があります。

でも、学生も特に1〜2年生の間は週5で大学に通っている人が多いですよね。その上バイトやサークルをしている人もいることを考えると、学生と社会人にそこまで差はない気がします。社会人は思っているほど立派ではないので大丈夫です(笑)。仕事の種類にもよりますが、ある一定の期間内にノルマを達成できさえすれば、具体的なスケジュールはある程度自分で組める仕事もたくさんあるし。例えば 、「水曜日は舞台の初日だから絶対定時で上がらないと」と思ったら、水曜日は早めに仕事を切り上げて、その分火曜日と木曜日に残業して頑張る、ということができたりします。学生だとそういった融通は意外と利かないじゃないですか。前期の授業を登録したあとにコンサートの日程が発表されて、授業と被っているから行けないということもあったので、働きはじめてからのほうが趣味と仕事の両立はしやすくなったと思います。

確かに、社会人にも融通が利かないことはあります。出版社時代にしていた漫画の編集の仕事では、締め切り前だと15時間近く会社にいて原稿を待つこともありました。でもいろいろな工夫をして趣味と仕事を両立させていました。具体的には、会社の人に自分の趣味を事前に伝えておいて、好きなアイドルが出ているときは会社のテレビで音楽番組を見せてもらうといったことです(笑)。また、同じ編集部にはいろいろな趣味を持った人がたくさんいました。そうすると、コンサートのために早退しなければならない旨を、宝塚ファンの人に伝えて仕事を代わってもらうだとか、逆にその人が宝塚の舞台初日で兵庫に行かなければならないときは仕事を代わってあげる、といったことができるんです。ギブアンドテイクの関係ですね(笑)。

——趣味と仕事をうまく両立させるためには、趣味をオープンにしておいたほうが良いのでしょうか。

さっきの例のように、事前に趣味をオープンにしておくと良いこともあるんですよ。ただそれは私の職場のように、周りにオタクがたくさんいて、オタクであることが浮かない場合に限られます。そうでない職場だとオタクであることが浮いてしまうので、趣味をオープンにすることは必ずしもプラスにならないと思います。職業によっては、そもそも趣味をオープンにすることが不可能な場合もあるかもしれません。例えば、中学校の先生が職員室で「ジャニーズジュニアの中学生の子のファンなんです」とは言いづらそうですよね……。また、趣味をオープンにしたからには、趣味にかまけていると思われないように、オタクとしての活動のない期間に人一倍仕事を頑張る必要があります。ただ、良い意味で自分にプレッシャーをかけることにもなるので、プラスでもあると思います。