「新しい」ものに魅力を感じること。それは日常をより良いものに変革したいという前向きなエネルギーによって生まれるものだ。一方で、私たちの周りには、「新しさ」への欲求によって生み出されてきた、無数の「古い」ものたちがある。供給過多の現代、目まぐるしく「新しさ」が更新されていくなかで、「古い」と切り捨てられた既存のものたちは、もう価値を失ってしまったのだろうか。「新しさ」を求めながらも、「古い」ものに目を向けることはできないのだろうか。

河村慶太さん、井村美智子さんは、古着のリメイクを特徴とするファッションブランド、YEAH RIGHT!!を夫婦で運営されている。「古着」を再構築し「新しい」服を生み出す彼らのクリエイションから、新旧の二項に囚われない自由な在り方をうかがうことができた。


「古着」で作る「新しい」服

——お二人は文化服装学院(註1)を卒業し、現在デザイナーとして活動されていますが、昔から服に対する興味はあったのでしょうか。

河村慶太さん(以下河村):文化服装学院には、新しい服を買うのが好きで、毎日おしゃれをしている人が多くいました。一方で僕はあまりそういうことに興味がありませんでした。毎日同じ服を着ていた時期もあったくらいです。中のTシャツは変えていたけど、ボトムスと羽織はずっと一緒みたいな。ひとえに服が好きといっても、消費者として好きなのか作り手として好きなのかは違うと思います。僕の場合は作り手として服が好きという気持ちが強いですね。

井村美智子さん(以下井村):通っていた高校が自由な校風だったので、髪の毛を染めたりパーマをかけたり、あとは基本の制服を自分なりにアレンジしたりしていました。そういう範囲でおしゃれをすることは昔から好きでした。

文化服装学院に入ったのはデザイナーになりたかったからではなく、服に対する純粋な興味があったからです。周りの子たちがみんな大学へ行くなかで、自分は何を学びたいのか真剣に考えた結果、専門学校で本格的に服について学ぶことを決めました。

(註1)東京都渋谷区にある服飾の専門学校。

——古着を再構築することによって、YEAH RIGHT!!のアイテムは独特の雰囲気を持っていると思います。なぜ生地から作るのではなく古着のリメイクをしようと考えたのですか。

井村:洋服を作るときに、生地からよりも古着からのほうが発想しやすかったんです。他のブランドが材料として生地を利用しているのと同じように、私たちは材料として古着を扱っているという感覚ですね。

河村:僕らは制約があるなかで服を作ることにやりがいを感じます。材料として古着を使うと、作れるデザインが限定されていたり、完成した服が想定していたものとは少し違うものになったりするんです。そういう自分たちでコントロールできない部分に面白さを感じています。制約があるなかで何を足すと良いのか、何を引くと良いのかというバランスをとるのが僕たちは得意なのかもしれないですね。

——使う古着はどのようなものを選んでいますか。

河村:材料として使えるだけの量があって、みんなが普段から慣れ親しんでいるアイテムを選ぶようにしています。プリントTシャツとか花柄のスカートとか。仮に希少価値が高い古着を選んでしまった場合、リメイクした服を量産することができません。また特徴的なデザインのものを選んでしまうと、完成した服の良さが材料である古着の個性に依存してしまうことになるので、リメイクをやっている意味がありません。どこにでもある古着なのに、YEAH RIGHT!!がリメイクするとこんなに良いものになるんだという驚きを感じてもらいたいんです。そういう意味では古着屋さんとは違う視点でものを選んでいると思います。古着屋さんにとっては、そのアイテムが一着の完結した服として魅力的かどうかが重要になります。一方僕らの場合は、古着を新しい形に再構築することが前提となるので、これをほどいたらどうなるか、サイズ感は適切かどうか、そういった目線で古着を選んでいますね。

——たしかにYEAH RIGHT!!のコレクションでは、私たちが日常的によく目にするアイテムどうしがミックスされているのが印象的でした。

河村:そうですね。最近では、ナイキやアディダスといったスポーツ系のブランドの古着も使うようになりました。そういう「新しい古着」が古着市場に増えてきているんです。ファストファッションの古着もよく見るようになりましたね。逆に以前は簡単に入手できていたような、70年代や80年代などの古着は減ってきているし価格も高騰している。市場に出回る古着の性質が変わってきたので、古着の定義が何なのか分からなくなってきていて。もちろん誰かが一度着たものなので、「古い」ものではあります。ただ、いわゆる「古着」というよりも「溢れている一度着られた洋服」をリメイクしているという感覚ですね。