——サブカルチャーには思い入れの強い人が多い分、動画で扱う以上、取り上げ方によっては視聴者からの反感を買うおそれがあるのではと考えています。対策として気をつけていること、意識していることを教えてください。

本田:まずは、絶対に知識でマウントは取らないということですね。

そのうえで、その作品がもともと好きな人にも抵抗なく動画を観てもらえるような工夫をしています。

そもそも好きな作品について喋られることに抵抗ある人っていると思うんですよ。

僕もそうなんですけど、好きなものを知らないやつに取られた気がするような。

僕は電気グルーヴがすごく好きなんですけど、『電気グルーヴを語る!』っていう動画は多分見ないと思います。

そういう人をどうやって取り込むかは結構考えています。

タイトルやサムネイルを工夫して、悔しいけど見てしまうような面白い切り口を作ろうとしています。

まずはそうやって動画を観てもらって、「まあこいつら別に喋っててもいいか」って思ってもらうために喋り方とかを気をつけています。 

矢崎:僕は逆にパッション推しですね。

好きだって言うことを頑張って伝えようとしています。

「こいつこんなに好きなんだ」っていうのが伝われば、見ている人もムカつかないかなと思っています。

知識量というよりはパッション。

 本田:同じものが好きな人って、本来ならめちゃくちゃ仲良くなるはずだからね。

例えば飲み会とかで好きなものが一致する相手がいたら仲良くなれる可能性高いじゃないですか。

でも画面越しだとそれがあんまり上手くできない感じはしますね。

だからできるだけパッションを伝えて、友達みたいな距離になりたいなっていう気持ちがすっごいあるんです。

内輪ノリを一緒にしたい。

池田:僕も自分の好きなものが取り扱われている動画はあんまり見たくないなって思う人間です。

同じ考えの人間を納得させる動画が作りたくて、漏れがないように全体を網羅しようとしすぎた結果、これまであんまりうまくいかなかったですね。

切り口の大切さに最近気づきました。

 矢崎:最近池田の人間性をもうちょっと出していこうっていう話になっています。

例えば好きな人が出ていたらどんな動画でも観たいって思うはずなんですよ。

だから池田には、「ああこの人が語っているなら観たいな」って思えるような存在になって欲しい。

池田:面白くて有名になります。

本田:面白さ、笑っちゃうって要素も大事だと思うんですよ。

たとえ間違ったことを言ってても笑えるなら許してもらえるし、優しく指摘してもらえる。

あと嫌いな理由は言わないようにしました。

人が作品に対して好き嫌いの感情を抱くことは自由なんですよ。

それはみんながわかってることだと思う。

でも嫌いな理由まで言うと反発心が生まれてしまう。

それはそうじゃないですか、みんな。

僕も視聴者側だったら言いたくなっちゃう、「お前ほんとにわかってんのかよ」って。

「この作品はこうでこうだから良いんだよ」って。

そういう議論を近い友人とはしたいけど、対マスだと収集がつかなくなっちゃう。

でも嫌いとは言いたいんですよ。

信頼してもらうためにもちゃんと正直なことを言いたいから。

だから「これはあんまり好きじゃないです」とか「嫌いです」とか言った後に、理由は言わないようにしてます。

池田:それ大事だわ、いいよそれ。

矢崎:まあこの三人の中に好きな人がいればいいんだよね。対話を動画にできるから。

本田:まあね。

でも僕たちの『ブランキーファンとミッシェルファンが大喧嘩』っていう動画に低評価が多くついたんですよ。

Blanky Jet City側とTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT側に二人が分かれて、どっちが優れたバンドか言い合う内容です。

その時に自分側の良い所だけじゃなくて相手側にもいちゃもんをつけるような発言をしたことにみんな引っかかってたんですよね。

それって理由を言ったからかなあと。

そういう議論をするのは好きなんだけどな、ほんとは。

でも愛がないといけないし、お互いの関係性にもよるので、インターネット上でやるには向いてないことかもしれませんね。


——おまブラでは世間の槍玉に上がってしまったアーティスト、例えば小林賢太郎氏や電気グルーヴについても取り上げられていました。動画からは作品そのものを評価しようじゃないかというメッセージも感じられましたが、どういった動機から作られたのでしょうか。

矢崎:僕の根底にあるのは好きなものを喋りたいっていう気持ちなんですよ。

僕は小林賢太郎が好きだし、彼が誤解されているのは悔しかったんです。

動画のタイトルにあるような「救いたい」っていう気持ちより、ほんとに好きだから。

本田:俺らには救えないしな。

矢崎:そう。あと同じ気持ちの人が絶対いるはずだって思えたからですね。

「同じ気持ちの人たち集まって!僕もそうだよー!」って言いたかった。

本田:本田も矢崎とほぼ同じ動機。

ただ僕は騒動と作品は切り離して考えるべきじゃないと思うんですよね。

作り手の人間性と作品はリンクしていて、切り離せないものだと思っているから。

だけど騒動に触れるのは労力もかかるし、キリがない議論になってしまう。

だからわざわざ事件に関して取り上げないけど、その時期にその動画を出すっていうのは、それでもこのアーティストいいよねって言いたい気持ちがあるのだと思います。

矢崎:そうだね。切り離すというよりあえて言わなかった感じですね。

動画を出す前にかなり内容のチェックはしましたね。

本田:僕らにしては慎重な方笑。

ノイジーマイノリティとは関わりたくないんですよ。

だからその人たちと戦ってる勢力、本当に作品を愛している人たちを応援したいって思ってます。

「そうだよねがんばれ、俺らもそう思ってる!」って。

すみません、弱々しくて。切り開いてなくてすみません。

矢崎:仲間を連れてこないと何もできないから笑。


——ネット上では著作権の取り締まりを強化していこうという流れがありますが、例えば漫画のコマを引用するなどと言った行為は、いまだに発信者のモラルに依存している部分が大きいと思います。さまざまな作品を取り上げる上で気をつけていることはありますか。

本田:利益を邪魔していないかどうかがポイントだと思っています。

僕たちの動画を見て、「ある程度面白い部分を知れちゃったからもういいや」とは絶対に思われたくないですね。

でも全てこっちで線引きしちゃってるから、怒られたらすぐ辞めますって話なんですけど。

 池田:結局線引きって俺らでするしかないからね。

矢崎:作者本人が動画を観て喜んでくれるかどうかは考えています。

浅野いにおさんとか大橋裕之さんとかには実際見てもらえています。

本田:いまのところ、ありがとねって言われているからいいのかなって。

ほんと迷いながらですけど。

あとはマーケットの文化がなくならないように気をつけたいですね。

ファスト映画が問題になった時は、より一層引き締めました。

ああいう風になっちゃいけない、作品を消費させちゃいけないなっていう気持ちでやっています。

池田:確かにネタバレとかについても最近話し合ってるね。

本田:ネタバレも一種の消費だと思います。

「じゃあその映画観てみよ」って思える気持ちを上回るネタバレはしちゃいけない。

僕たちの匙加減ではありますが、最近厳密に注意している部分です。